土田知也 医師(調布東山病院 内科)

日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医・指導医
日本病院総合診療医学会認定病院総合医
日本内科学会総合内科専門医・指導医 JMECC インストラクター
日本認知症学会専門医


火曜日午後と水曜日午後に外来担当中!

 

総合診療とはどういうものでしょうか?

患者さんを心身の健康という一つの視点からだけでなく、家族関係や就労や経済状況、地域全体をみる診療です。
用いられる場面や国によっても違いがありますが、「総合診療」と「プライマリ・ケア」はほぼ同意語と考えられています。

 

現代で総合診療が求められるのはなぜでしょうか?

患者さんがある症状を訴えてきた場合、臓器別専門(消化器内科、循環器内科、呼吸器外科、眼科、皮膚科といった各臓器の診療を専門的に行う)の縦割りの知識では診療がうまくいかないことが多いのが実際のところです。

たとえば「胸が苦しい」という訴えの場合、心電図やレントゲンで異常がなく、心臓の病気でも呼吸の病気でもないことはプライマリ・ケアの場では多くあります。その場合、臓器に限らず患者さんの症状を横断的に考え、診療を行う必要があります。

総合診療のトレーニングを受けた医師は臓器別の診療スタイルではなく、症状を横断的に診療するトレーニングを受けていますので診療の幅が広くなります。

高齢化が進み、様々な疾患をもつ方が増えてきました。糖尿病と高血圧は内科、腰痛は整形外科、皮膚の問題は皮膚科、認知症は精神科などいくつもの医療機関を別々に受診されている方も多くおり、患者さんには負担となっています。総合診療を行っている医師が一人いればそこですべての疾患の対応が可能かもしれません。

以上のように、プライマリ・ケアを担う医療機関では、各臓器別の対応のみでは解決しない問題が多くなってきました。そのため総合診療の必要性が再認識されてきています。

 

総合診療医と家庭医、また一般診療医の違いは?

総合診療専門医の研修では、病院のみならず地域の診療所でも研修を行い、総合診療医としての知識・技術を身につけ、試験に合格することで総合診療専門医となります。

世界的にはプライマリ・ケアを専門とする医師を家庭医(family physician)とよびます。日本の家庭医療専門医は世界家庭医機構の国際認証を受けているので、日本における家庭医療専門医は総合診療領域における国際標準の専門医となります。

つまり、日本全体に総合診療・プライマリ・ケアの裾野を広げるための総合診療専門医、世界にも通用する実力重視の家庭医療専門医ということになります。

一般診療医との違いは、総合診療医・家庭医はプライマリ・ケアを行うための専門的なトレーニングを受けているかどうかという点です。

地域で診療をされている先生はもともと何かの専門があり、総合診療の研修をされずに開業されている方がこれまでは多かったと思われます。ご自分の専門領域以外のことを研鑽され、診療を行っている先生も多くいらっしゃいますが、どこかに苦手分野というものはあるかもしれません。
その点、総合診療医・家庭医は病院での総合診療部や家庭医療の指導医のいる診療所の他、小児科・救急・在宅・緩和ケア・整形外科など総合診療の研修を受けている医師となります。

 

「総合診療専門医」は、2018 年の専門医制度変更により新しくできた名称です。
総合診療専門研修、内科・小児科・救急科の領域別研修、その他の領域の研修を修了することで総合診療専門医取得となります。

 

総合診療医・家庭医の強みとは?

家庭医は世界中のありとあらゆるところにいます。そこではみなが違う医療を行っています。
たとえば無医村に一人でいる総合診療医・家庭医はお産や簡単な手術も行います。都市部では大病院との連携をする役割や企業健診、グループホームへの訪問診療などを行っています。

 

このように場所が変われば医療の内容が変わるのが家庭医です。その強みとして、5つの頭文字「ACCCC」で表されています。

A:Accessibility(アクセシビリティ/近接性)
身近であるということです。物理的にも精神的にも最も近くにいて「あなた」をよく知っている医師です。

C:Continuity(コンティニュイティ/継続性)
長く診療をしていくということです。時には本人のみならず、その患者さんの子どもや両親含め、世代を超えて、「あなた」と「あなたの家族」をケアします。

C:Comprehensiveness(コンプリヘンシブネス/包括性)
病気の診断治療のみならず、予防や健康増進、地域の健康問題などひとまとまりのものとして対応します。

C:Context(コンテキスト/文脈性)
それぞれの患者の事情や考え方に寄り添って対応することです。たとえば在宅ケアや時には専門医の治療を拒否した方のケアなどです。

C:Coordination(コーディネーション/協調性)
地域の病院・臓器別専門医・地域の訪問看護師・ヘルパー・ケアマネジャーなど、みんなとの連携を大切にします。

 

「身近で、ずっと、何でも、みんなで、あなたの事情にあわせて」ケアを行うこと。
つまり、あなたを一番よく知っている医師であり、あなたのことを専門にみる医師が家庭医です。

 

どんなときに頼りにしたらよいでしょうか?

なんとなく気分が悪いなど、どの診療科に行ったらよいのかわからない場合や、いろいろな病気(疾患)があっていくつもの病院にいかなくてはいけない場合など、まずは総合診療医・家庭医に相談すると対応してくれます。

 

どこに総合診療医がいるか、わかりますか?

どこに家庭医の専門医や総合診療医がいるかは、「日本プライマリ・ケア連合学会」と「日本専門医機構 総合診療専門医検討委員会」のホームページに載っています。

これからの日本では総合診療医・家庭医がますます必要となってきます。興味のある方は一度、日本プライマリ・ケア連合学会や日本専門医機構のホームページをご覧いただければと思います。

 

患者さんの診断をつけるのみならず、患者さんの立場にたってその思いをくみ、患者さんが抱えている問題についてお互いに同じ理解ができるよう、気を付けています。患者さんが、「相談してよかった」「またこの先生に診てもらいたいな」と思えるような診療を心がけています。

 

(東山だより Vol.52(2025.2.1発行)より)

 

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