ユマニチュードとは

ケアを通して人と人との絆を深める、フランスで生まれた技法です。

「人間らしくある」という意味を持つフランス語の造語で、最期の日まで尊厳をもって「その人らしく」あり続けることを支えるために、ユマニチュードの哲学と技術が存在します。

考案者

フランスの体育学の専門家、イヴ・ジネストさんとロゼット・マレスコッティさんが、40年以上におよぶ病院、施設や家庭での経験をもとに体系化しました。

ユマニチュードが大切にする「哲学」とは

「人は、人に認められることで、その人らしくいられる」というシンプルなもの。
人は誰かから尊重され「あなたは大切な存在です」と伝えてもらうことで、「その人らしさ」を保ちます

ケアで大切なのは、相手にこのメッセージを伝え、お互いに良い関係性を築くこととユマニチュードでは考えています。

その人の持っている力を奪わない

介護をするときには、何でもやってあげることが良いと考えられがちですが、それが実は「本来できることを代わりにやってしまうことで、ご本人の持つ能力を奪ってしまっている」可能性があります。

自信を持ってできること

たとえば家事など、昔からいつもやっていたことは体が覚えていることが多く、ご本人が自信をもってできる簡単なことを一緒にやってみるのもひとつです。大切なのは、その人の持っている能力を奪わないようにすることです。

 

 

 

優しさを表現するためにある技術

ユマニチュードは、ケアをする人と受ける人との間で「優しさ」のやりとりができるように考えられた技術です。
言い換えると、優しさを相手が理解できる形で表現するための技術です。

ユマニチュードでは、相手に対する私たちの行動すべてが「あなたはとても大切な存在です」というメッセージとして届くように、「4つの柱」と「5つのステップ」という技術を定めています。

前編では、まず「4つの柱」についてご紹介します。

 

4つの柱

ひとつひとつの技術を使う、そして4つの技術を組み合わせて使うことで、相手とよりよい関係を築いていきます。
人は「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4 つの柱を通して、お互いに人として認め合っています。これは、人が生涯を通じて必要とするものです。

見る

見る

私たちが大切に思っている相手には無意識に行っている行動です。しっかりと相手の視界に入るように、自分の位置も考えます。

 

Point

水平に
正面から
近く
長く

 

話す

話す

相手から返事がなくても言葉を伝えます。介護に一生懸命になり、無言になってしまうときは、自分の動きを実況中継のように言葉にしてみます(「左腕を拭きますね」など)

 

Point

穏やかに
抑揚をつけて
低めのトーン
ポジティブな言葉

 

触れる

触れる

「触れる」ことで、私たちは言葉によらないメッセージを相手に届けています。
相手に触れる時の大原則は「掴まない」こと。相手を安心させるように、触れている面積を広くします。

 

Point

広く
やわらかく
ゆっくり
包み込むように

 

立つ

立つ

立つことは、人としての尊厳を保つことに大きな意味を持ちます。
1日に合計で20分間立つことができれば、寝たきりにならずに最期の日まで立つ力を保てます。

 

Point

尊厳を保つ
空間認識
生理学的効果

 

介護だけじゃない 日常で使えるユマニチュードの技術

ユマニチュードは介護する人の技法と思われがちですが、子育てや日常的な周囲の人とのコミュニケーションの場面などにも役立ちます。

子どもと

 

例えば、幼い子どもがぐずって泣いている時に、子どもと同じ目線の高さで視線を合わせ、「笑ってるお顔が可愛いよ」とポジティブな言葉で話しかけ、背中を包み込むように触れると、安心感が伝わって落ち着いたり。

 

 

初対面

また、初対面の人と関わる時には、正面からしっかりアイコンタクトを取ってから、穏やかに、少し抑揚をつけて話しかけると、相手にとても良い印象を与えることができます。

相手に「あなたのことを大切に思っていますよ」というメッセージが届き、より良い関係を結ぶことができます

(当院ユマニチュード推進室 田邊由芙 ユマニチュード認定インストラクター)

 

 

本や映像から学ぶ

ユマニチュードを知るうえでわかりやすい書籍や映像があります。介護に携わるご家族にもおすすめです。ご興味がある方はぜひご覧ください。

  • ユマニチュード入門(医学書院)
    著者/本田 美和子、イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ

  • 家族のためのユマニチュード〝その人らしさ〟を取り戻す、優しい認知症ケア(誠文堂新光社)
    著者/イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ、本田 美和子

  • ユマニチュードと看護(医学書院) 当院ユマニチュード推進室 安藤夏子科長も座談会に参加しています
    編集/本田 美和子、伊東 美緒

  • 優しい認知症ケア ユマニチュード(NHK厚生文化事業団)
    NHK福祉ビデオライブラリーにて無料で貸し出しを行っています。

  • 国立病院機構 東京医療センター 高齢者ケア研究室 YouTube チャンネル

 

参考:
「優しさを伝え、支え合う社会へ みんなでユマニチュード」第3版(日本ユマニチュード学会)
「優しさを伝えるケア技法 ユマニチュード」第2版(日本ユマニチュード学会)

「広報誌 東山だより(2022.9)」より転載

東山会は、一般急性期病院、人工透析、予防医療、在宅医療・介護の4つの分野でサービスを提供しています。

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人生の航路(あなたらしい船の旅):東山会の取り組み